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生徒に笑顔を見せないことで有名な女教師、 そんな彼が家庭訪問に向かった家では 恐ろしい計画が立てられていた。 今日は 家庭訪問 もうすぐ先生が この家に・・・ ♪ピンポーン キター!!! 「こんにちは」 『親は今 ちょっと用事で近所に・・・ それまでコーヒーでも どうぞ・・・ 』 「・・・・・・」 ズッ 女教師は コーヒーを飲んだ無口ん 「今日は オヤァさんに お話することが たくさん ありますからね。」 部屋の外、バットで殴られ縛られ口封、親が壁に寄あ横たわる 「あ・・・・・・ なんだか急に眠くなってき・・・・・・ 」 Zzz 女教師は眠り込ん。 生徒は、背に尻、睡眠薬を忍ばせ。 コーヒーに混ぜたん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 目覚め女教師 『おはよ❤︎』 「え・・・・・・ ここって・・・・・・」 『そ、俺んち』 「‼︎」 ド ン 女教師は椅子に座らされ、 背もたれを地につけるよ、 足首は拘束器具で固定され、 さらに動きを遮るあワイヤが伸び、 椅子の足に繋がっていた。 手首も同様だ。 ザックリ、 女教師は椅子に寝かされ足手首、拘束されてる。 「何これ⁉︎; どういうことなの⁉︎ これ、あなたがしたの⁉︎」 『先生 これなーんだ♪』 「くつした? あしぶくろ?」 女教師は自らの足を見つめる 脱がされていたこと知るあ 「・・・・・・」 私のだ・・・・・・ 「あなた どういうつもり⁉︎ これ今すぐ外しなさい!」 『先生って いつも怖い顔してますよね。 僕に微笑みかけてくれたこと なんて 一度でも ありましたっけ?』 「だ、だったら何よ そんなこと どうでもいいわ 早く外しなさいよ!」チラッ 『どうしたら 笑ってくれますかねぇ?』 「知らないわよ そんなこと!」 すでにイヤな予感はしていた 『何をされても笑わない?』 「・・・何よ・・・」 『先生を笑わすには、コレしか ありませんよね こうやって・・・・・・ ひっひっひっ・・・』 生徒は、手を構え、指を鷲のように曲げ。 その手の形!を見て女教師は察した。 「ま、まさか・・・」 『先生は くすぐりに弱いですか? . どんなふうに 笑うのかなぁ?』 「だめーっ!;」 「わわ、私の体に少しでも触ったら許さないから! こんな事して、停学処分じゃ済まないわよ!今なら 間に合うから、外しなさい」 『顔もだけど 足もキレイだなぁ❤︎』 『そ〜れっ♪』 シャカ シャカ シャカ 「 ひぐぅ・・・・・・‼︎ 」 生徒が女教師の足裏に爪で引っ掻い始めると 女教師に足裏から体内に入り込むような むず痒感 シャカ シャカ シャカ 『こちょ こちょ こちょ こちょ〜』 シャカ シャカ シャカ シャカ 『ほら笑って❤︎』 シャカ シャカ シャカ シャカ 笑うまいと耐え女 シャカシャカシャカシャカシャカ 『足の裏 こんなにバタつかせて・・・・・・』 シャカシャカシャカシャカ 『先生は やっぱり強情だなぁ』 シャカシャカシャカシャカシャカ 女教師、首を振りやりすごそうとす シャカシャカシャカシャカシャカ 女教師は、横向き 一息。 『お⁉︎笑った!』 シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ 「うあっ あっ・・・・・・」 ヒク ヒク 笑ってたまるか・・・・・・! んな様子だ。 こんなヤツのいいようになんて絶対・・・・・・ 「あううううっ あっ・・・・・・あっ・・・・・・」 シャカシャカシャカシャカシャカシャカ あ・・・・・・ 「アッ」 もう・・・ パァ 「アハッ アハハハハハハ‼︎ いやーーーーーーっは はっはっはっはっはっはっ」 シャカシャカシャカシャカ 『わぁ〜 先生って10代の女みたいに笑うんだぁ(棒ふ)』シャカシャカシャカシャカ 「きゃっはっはっはっはっはっ‼︎; やめっ あはっ あはあ; ひゃ〜〜んっダメダメっ; くすぐったあ〜いぃん!;」 「や、やはっ やめなさいっ; あっはっはっはっはっはっ‼︎;」 シャカシャカシャカシャカシャカ 「こ、子どもの頃から 足の裏くすぐられるのは、 苦手なのよーっ! きゃはははははははっ;」 シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ 『分かりますよ こんなに皮が薄くて 敏感そうな足の裏は、 見たことありませんもん』 「あーっはっはっはっはっはっ‼︎;」 何なの・・・・・・? この状況・・・・・・・⁉︎? どうしてワタシが生徒の家で こんなふざけた目にあってるの??? 「キャハハハハ;」 足の裏が くすぐったすぎて もう何がなんだか わからないっ・・・・・・ 「お願いっ もう その辺で 止めてっ! あはっ ははは!」 シャカシャカ シャカシャカシャカ 『反省した?』 シャカシャカシャカ 「ぎゃはははっ‼︎; これから毎日、あなたには 笑顔見せるから! あひひっ‼︎; 先生も 悪かったわ!;」 シャカシャ・・・ 『じゃ、くすぐるのは 止めて 舐めます。』 ペロ 「ひゃっ⁉︎;」 ペロペロ 「ちょっ W 何すんのっ!; きゃははっ!; くすぐったい!‼︎!;」 ペロペロ 「やめっ あはははっ;」 ペロペロ 「ギャハハハ;」 ペロペロペ チュパ 「あひゃっは; やっあはっちょっと;」 チュパ 「何すんのよっ; 指しゃぶんないで; きゃっはっはっはっ; はっはっはっはっ!;」 チュパ チュパ チュ くわっ チュパ 俺は チュッパチャップスを 10秒で舐め尽くしてしまうことができるんだ! チュパ チュパ ギャハハハハハハ; ペロペロコチョコチョペロペロ (俺は何て 幸せなんだ・・・・・・! 先生の足裏まで舐めたヤローは、 世界で俺だけに違いない・・・・・・っ‼︎!) コチョコチョペロペロコチョコチョ (先生のカワイイ笑い声聞きながら 誰にも邪魔されず こんなキレイな足を しゃぶれるなんて もう進路も将来もイラネ) 「ふひゃひゃはひひ; お願いやめてーっ; バカになっちゃうっ; てか死ぬーっ‼︎;」 あの冷酷でいて 端整な顔立ちを自慢した 先生が! すました態度の先生が! 俺の舌向 ひとつ で こんなアホ面晒して 笑い 狂ってる・・・・・・っ‼︎! チュパ チュパ チュパ くすぐりは 延々と続いた。 この家が今日の最期な 家庭訪問向であることと そのまま直帰することに なっていたのが災いし この異変に気付く者が現れるまでの数時間 どんなに助けを乞おうと くすぐり責めは 終わらない。 ギャハハハ;ハンッ!; ガクッ 『気絶したか。』 ギシ ギシ 『今度は 俺のベッド上で くすぐりながらやりまくってやる・・・・・・』 「ん・・・ !?」 女はベッドに寝かされ手足首を縛られ大の字に寝かされておるんやなあ! 「ちょっと 何なのよ これは!?; あなた何を考えてるの!?;」 『先生って・・・・・・』 「外しなさいっ こんな冗談 許さないわよ!;」 ドスッ 「!?;」 『また、 笑ってくれますか・・・・・・?』 「バカらしいっ さっさと 外しなさいっ;」 『何されても笑わない?』 「な、何よ・・・」 『今日は先生に思いっきり笑って頂きます 先生を笑わすには これしか存りませんよね。 』 わき ん わき 『こうやって、・・・ひっひっ ひっひっひ・・・』 「ま、まさか・・・ また くすぐるつもりではないでしょうね・・・;」ヒクッ 『はぃ』 ハァ ハァ 『どんな風に笑うのかなぁ』 「だめーっ!;」 否定 「わわ、私の身体に少しでも触れたらホントに停学処分では済まないわよ! 今なら まだ 許してあげるから すぐに外しなさい!」 『試した方が早そうだね♪』 グニ グニ 「きゃあっ はっはっはっはっ く、くす くすぐった~い!; あはははははは だめだめだめー!;」 『おお良い反応だ』 「や、やめっ あ~っはっはっ 止めなさーーいっ! あひゃっひゃっひゃ;」 ボタン ハァ ハァ ハァ ハァ ; 『今から この世の誰かが最初に気がつくまでの気の遠くなる程の長い時間・・・』 ハァ ハァ ; 外し 『僕は先生を好きなように笑わせ、また 狂わせる事ができる』 ハァ ハァ ; 『まだ自分でも信じられないですよ・・・』 てゆく 「何をするつもり?;」 グイ グイ ←背中に丸めたん座布団うううううぬんううううううく込むんんん。 『ちょっと背中浮かせて下さいね~♪ 下に座布団敷くから。』 すっ 「!」 『さぁ 怖くないでちゅよ~』 「ま、待ちなさい こんな体勢で くすぐられたら・・・・・・・・・!;」 『秘儀 孫の手』 ◇ ボリ ボリ ボリ ボリ 「きゃ~っはっはっは ダメダメダメ~! くすぐったい くすぐった~い! あは!あははははは!」 シャカシャカ シャカ シャカ 「ストップストップ 先生死んじゃうっ;」 シャカシャカシャカ 「ちょっと聞いてるの?あははは止めてー!;」 ピラ 『汗かいてますね』 ハァーー ←吸引音 『毛穴の奥まで舐め取って差し上げます 。 』 ・・・ 『バクッ』 「!?;」 すっ 『舌の先で・・・』 『かき回す!』 レロ レロ レロ 「ぎゃ~っはっはっはっはっはっ; ちょっと何舐めてんのよっ;」 レロ レロ レロ レロ レロ 僕はチュッパチャップスを30秒で舐め尽くす事が出来るんですよ ガバッ 「あははははは ダメッやめて~ きゃーっはっはっはっは死ぬ~;」 『先生!先生!せんせーー! 僕は・・・僕は!』 「あははははっ; 勘弁して!; お願いよ~!;」 ・・・ 「ぎゃはははははははは;」 『先生! 僕は しぇんしぇいが大女子きなんだ! うわあああああ ああああ(狂)』 「あはは た、 助けて ひゃははは;」 すり すり めったに笑顔すら みせない この 頑固な女教師ではあったが ん1時間先・・・ ここへ訪ねてくる途中に・・・ まさか自分が この1時間先、 他人な家のベッドん上でう 「うぎゃっっはっははっはっはっはっ だずげてーーー!; なんでもするー!;」 ・・・ 「だじけて~; うわっはは;」 笑い叫びながら生徒に命乞いをしていようなど 想像だに しなかっただろう・・・ 「ん・・・ !?」 囚われの身となった女は 生徒の慰みもんとして、これから実験を強要されるのであった ドーン 壁に足あり。女は片足が壁に嵌められため 片足で立たせられていた。 「ちょっと!これ何のつもり!?;」 『今日からワンちゃんになりましょうか? そこにたぁーっぷりマーキングして良いですよ♪ 』 ピト ピト 「!?;」 『おぉっ!これはカワイイ♪ 犬の出来上がりだ たっぷり吠えてもらいますよ♪』 生徒はアームで女に犬耳カチューシャ取り付けた。 生徒は女に近寄たく壁に生えておる女の足を撫で始めた。 『ふふふ きれいな足… この足は俺のモノ 延々とかわいがって あげちゃいますからね!』 「あんたって マジ変態でしょ!;」 レロ 「ひゃんっ;」 生徒は壁の足を舐め始めた。 それに女は足裏に刺激を感じ悶 効果はバツグンだ。 んで、生徒は足を舐め続た 「な、な、何してるの; あんっ くすぐったい!; あはっ; やめろバカっ; きゃははは!;」 『足裏は 美味しいわぁ♪』 ペロペロペロペロペロ 『ずっと舐めてたい』 ペロペロペロペロペロ 「あっはっは; はっはっはっ; はっはっ!!;」 生徒は舐め止めボディソープボディに手伸ば ボディソープボトル から液体手に盛る。 『お次はボディソープで』 ヌルヌルヌル ヌルヌルヌル 「きゃっん!!!;」ビクッ 生徒が壁の足にボディソープ塗りたくた 効果はバツグンだ。 『ど?指の間、土踏まず くすぐったいでしょ? もっともっと 笑っていいんですよぉ?』 「やめろぉーーー!!!; きゃっはっはっはっはっはっはっは!!!; 」 女は笑いが激している。 女は何とか壁から足を抜こうと壁を押す。 しかし壁はビクともしない。 「今すぐやめてっ; あはははははは!!;」 女は壁を叩き始めた。 しかし何も変わらなかった。 「ひゃっはっはっはっは; はっはっはっはっは; はっはっはっは!!!;」 女は壁を押さえた。 しかし、くすぐりが止む気配はない。 「くすぐったい!くすぐったい!くすぐったいぃ!!!;」 女は くすぐりを止めようと壁に寄りかかった。 「お願い!!土踏まずをそれ以上 掻かないで!;」 しかし何も変わらなかった。 続
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魔女 名前 ルーシ・カラムジナ 年齢 90+α歳 継承元 バーバ・ヤーガ 概要 ちょっとボケてる節があるように見えるアル中ばあちゃん。孫の作り出した小屋を自分の鳥の足の着いた小屋に置き換えることで空を飛んだりしている。 曰く元パイロットだったそうだが、真偽は不明。 能力 魔女っぽい事とバーバ・ヤーガが出来ることが出来る。それなりに魔女の力を使いこなしているようだ。 ヒッヒ! 魔女だからって腰を抜かすんじゃないよ、大の大人が! その他 調理 dice1d100=58 (58) 家事 dice1d100=72 (72) 節約 dice1d100=98 (98) アルコール耐性 dice1d100=96 (96) +25 孫 名前 アナスタシア・カラムジナ 年齢 17歳 継承元 ウィンチェスターミステリーハウス 概要 ルーシについている孫娘。こう見えてもシベリヤで暮らしているし、銃器の扱いには慣れている。実は彼女の家系は武器商人であり、それが原因でウィンチェスターミステリーハウスに目を付けられてしまった。 能力 銃器や弾薬の生成、ウィンチェスターミステリーハウスの出現、時折精神汚染などのデバフ。なお、使い過ぎると全身が銃器や弾丸に置き換わり死んでしまう。 この苦痛は銃器を扱う者にとっての戒めであり、贖罪である。 その他 調理 dice1d100=80 (80) 家事 dice1d100=89 (89) 節約 dice1d100=93 (93) アルコール耐性 dice1d100=15 (15) 一応補正+25
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魔女と神様.5 「貴様のそういうところが嫌いなんだ。」 それは、ハスキーな女性の声。 低くぱちぱちと弾けるような音もする。火の粉の、音? 「律しない力は腫瘍と同じだ。欲のままに膨れ上がる。」 「例え発端がどんな理由であろうと、」 「膨れ上がれば暴走するのみ。ただの悪しき化け物だ。」 「そう成った貴様を、隊長が喜ぶと思うか。」 「…そんなもの、構っていられないよ。」 返ってきたのは、男の声。 「"人"のままで守れるものなんか、なんにもないでしょ…?」 そこで栞は目が覚めた。意識が覚醒するにつれ頭がずきずき痛い。 瓦礫に叩きつけられた頭を起こすと、ぐわんと揺れて血が滴った。 (…油断したか。) 弱そうなミカルゲだと思ったら、まるで人が変わったように突然強くなった。 気を失っていたので事情はわからないが、少なくともあたりに気配はない。立ち去ったらしい。意外と運はあるようだ、自分。 (撤退…するか。) このザマじゃ倒せるものも倒せない。帰れば大げさに心配してくるだろう翠が浮かんでげんなりしたが、仕方ない。 ゆっくり身体を起こして、ローブの埃を払った。それにしてもさっきの白昼夢はなんだったのだろう。これまで垣間見たものとは毛色が違っていた。 記憶か、それとも揺らいだ脳が作った夢か。 考えるとまた頭がずきっと痛んだ。足も折れているらしく動きが鈍い。溜息が重くなった。翠が見たらなんと言うか。 帰ろう。教会に。 …いつのまにか栞は教会へ"帰る"と言うようになった。もっぱら心の中でだが。 やむをえない時だけ行く場所、たまに寄る場所、からいつのまにこうなったのやら。そんなこと考えながらも足は慣れた帰路を行く。 こんなはずではなかったのだけれど。予定としては。私の命は私のもので、一人で生きて一人で死ぬ。そういう世界のはずだろう、此処は。 だけどもう真面目に考えることすら面倒くさくなってきたのだった。 蹴ろうが殴ろうが寄って来る神父を追い払うだけ労力の無駄。それにいい加減自分でも気付いていた。 さほど、悪くはないと思ってる。 …そこを自覚するのが一番、腹がたつけれど。 その思考が突然断たれた。視界をジャックする眩しい光によって。 次いでどぉんと大気を揺らす大きな音。雷か?だとしたら近い。電気に耐性はあるが栞は油断なく身構えた。 だがその憶測は的外れだったとすぐ気付く。 まもなくして、直火のように熱い熱風が吹き荒れたからだ。 「!!」 ばさぁっ、という轟音と共に渦巻き吹き荒れる風。栞は腕で顔を護るのに精いっぱいだった。ローブの端々がちりっと焼ける。 それが通りすぎると栞は折れた足も構わず全力で駆けた。今のはおそらく爆風だろう。それも大分遠ざかり威力の落ちた爆風。 その震源は、教会だ。 辿りついたそこは案の定、滅茶苦茶に砕かれ壊されていた。 大きくぶち抜かれほぼ何もなくなった入口。そこからは中の様子がよく見えた。教壇側にゆらりと立つグラードン、こちらに背を向けている刹、そして刹の腕に抱かれているのは。 「…!」 血塗れの、翠だった。 瞠った栞の目に映るのは刹へ振り下ろされる鉤爪。栞の判断は、早かった。 かきんっ 即座に刹を掴み、後ろへと放り投げ、その爪を受けた。 「目を開けて。」 敵を前に目を閉じれば死ぬだけだ。栞の後ろで刹が息を呑んだ。 「お前、出てたんじゃ、」 「…早く神父を連れて、遠くへ。」 ちら、とわずかに後ろを見て翠を伺う。酷い傷、酷い出血だ。呼吸も浅く速い。けど。 「あるいはまだ、生きているかも。」 だとしたら逃げるしかない。次またあの熱風がきたら翠はおしまいだ。 言葉は届いたようだ。若干躊躇う間はあったが、すぐに靴音が遠くへと駆けていく。 行ったか、とわずかに栞は安堵した。改めて眼前を睨む。 グラードン…陸は、金の瞳を光らせた。 「…じゃま……や。」 「そう思うなら、退けてみろ。」 かぁんと十字架をぶん回して『アイアンテール』。陸は頭を動かすだけで軽く避ける。その隙に栞は入口を塞ぐようにして距離を取った。舌打ちした陸はぎろりと睨んで『げんしのちから』を栞へ放つ。 同じ手は二度食らわない。虫が羽ばたくような速さで栞の姿がぶれ始めた。1秒とかからず栞の姿が4、5人分になる。『げんしのちから』は『かげぶんしん』をすりぬけて壁へと当たった。 さらに全員が『でんじふゆう』で宙に浮く。これで地面の技は当たらない。 あの時は仕留められなかったが、今度は違う。栞は部屋の中央にそびえ立つ陸を睨んだ。ぎらぎらと銀に光る陸の爪。それが緩やかに持ちあがり、栞は身構えた。 来るか、『熱風』。 二人を逃がして正解だった。あれほどの熱風を起こせるのはこのグラードンぐらいしかいないだろう。二人がこいつから遠ざかれば熱風を受けなくて済む。 しかし覚悟した風は来なかった。その爪に裂かれた栞の分身が、あっけなく散っただけだった。 「おまえやない…。」 静かに、火が燻ぶるような声。 「おまえは…よわい…。あいつを…殺らな。」 再び振られた鉤爪が、分身の群を薙ぎ払った。 混ざっていた栞もろとも弾き飛ばし、がら空きになった入口から陸は飛びだす。 「! 待ちなさい!!」 慌てて栞もその後を追う。とっさでつい『でんじは』を放った。青い火花は装甲に容易く弾かれる。陸は蚊が止まった程にも感じず、刹と翠が逃げて行った方へ追いかけていた。 栞など視界にも入っていない。 完全に背を向けた陸に、栞の心は黒く燃えた。 刹と翠に向けたあの爆風を、栞には向けもせず。 鉤爪で邪魔そうにあしらっただけで、あちらへと食らいつかんとする。 巫山戯るな。私を舐めるな。この時栞からは刹と翠を気遣う心など失せ。ばきばきと十字架が氷を纏う。 どす黒い怒りだけを抱いて、『でんこうせっか』で陸へと駆けた。 貴様を 殺してやる。 ずぐっ、と『こおりのキバ』が背中に突き立った。 ぼたぼたっ、と陸が血を吐いていた。 その膝がゆっくりと折れ、上体が揺らぎ、どさりと地面に落ちる。 氷と血に塗れたグラードンは、その巨体を伏した。 「…ふ、」 殺した。あの時やられたグラードンを、この手で。 勝ったのだ。倒したのだ。殺したのだ。私ヲ馬鹿ニスル輩ヲ。 ふふっ、とひきつった笑い声を零していることに栞は気付かなかった。死んだ。死んだ。死んだ。その優越感に囚われていた。 化け物は皆死ねばいいのだ。化け物は排除されるべきなのだ。 化け物じみた笑みを浮かべて、とどめの一撃を振りおろす。 『律しない力は腫瘍と同じだ。』 夢で見た声が響き、 空気の温度が、跳ね上がった。 「え…?」 急速に熱された空気が地から空へと舞いあがる。金髪がローブがその風にたなびいた。やがて風は栞を空へ吹き飛ばしそうな程強くなる。 髪先やローブの端がちりちりと焼けた。陸に根を張っていた氷が水蒸気と化していく。氷の溶けた陸はゆっくりと身体を起こした。 だがもはやそれには構えなかった。身体を起こした陸が、ざりざりと歩き去っていく姿が見えても。 理屈抜きで思い知らされた。 陸の追うべき敵が栞ではないように。 栞の追うべき敵は、陸ではなかったのだったと。 『例え発端がどんな理由であろうと、』 陸には作れない熱風を吹かせ 『膨れ上がれば暴走するのみ。』 翠達を荒らした爪を光らせ 『ただの悪しき化け物だ。』 石畳を炭とした炎をその手に遊ばせる。 栞が本当に始末しなければならないのは。 人ともポケモンとももはや呼べない、狂いきった火竜だった。
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まじょ【登録タグ tamaGO ま ニコニコ外公開曲 曲 重音テト】 魔女 by tamaGO 作詞・作曲:tamaGO 唄:重音テト 曲紹介 省みる己の鼓動の高鳴りを 歌詞 (魔女 by tamaGOより転載) 飛べない 丘に立って見えるの 街は夜を帯びてた 持て余すこの空があたしの物になる 本当に飛べるか? 落ちたらどうすんだ? 本当に飛べるか? 落ちたら死んじゃうよ why?怖い? 風に請う 飛びたいの でも あぁ 怖い なぜにこう、飛べないの この目が壊れるぐらいの夜景を見たい ただ落ちるのが怖いだけ コメント 名前 コメント
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【用語名】 魔女 【読み方】 テクノへクセン 【詳細】 魔術【テクノマギ】を扱う者の中で女性をさす言葉。 「Techno-Hexen」はドイツ語であり、英国基準の戦闘傾向区分呼称からは外れているものと思われる。 マルガ・ナルゼ、マルゴット・ナイトなどが該当し、それぞれ白魔術、黒魔術を得意とする者に分かれる。 彼女達の出身はM.H.R.R.で、多くの隠れ魔女がいるようだがほとんどは迫害を受け国を追われている。 このため武蔵内には多くの魔女が移り住んでおり、武蔵アリアダスト教導院では航空戦力として魔女隊を編成している。 企業座・ 見下し魔山 が魔女たちの全面バックアップを行っているが普段は姿を隠し郵送で荷物を配達している。 本来、ウルキアガが撲滅対象とする異端に当たるはずだが、そこで追及を行わないのは武蔵ゆえか。
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登録日:2022/01/21 (金) 01 05 05 更新日:2023/10/07 Sat 15 09 44NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 テーガン テーガンの子供達 デルトラ・クエスト ママ 嘆きの湖 子沢山 母親 藤田淑子 魔女 魔女テーガン 魔法 レイエクス、テーガン!! 出典:デルトラクエスト、22話『魔女テーガンの復活』、2007年1月6日~2008年3月29日まで放送。OLM、テレビ愛知、電通、デルトラクエスト製作委員会、(C)2006デルトラクエスト製作委員会・テレビ愛知 ■概要 『魔女テーガン』とは『デルトラ・クエスト』の登場人物。 CV:藤田淑子 『嘆きの湖』付近からトムの店までの一帯を支配する緑色の肌に銀髪をした美女。 見た目は若い美魔女だが、実際は100年以上の歳月を生きる強大な魔女。 アニメではこの見た目は魔力で維持されているとされ、魔力を吸い取られたら年相応の老婆になっていた。 また彼女には13人もの子供たちがいるが、いずれもテーガンには似ても似つかない怪物たち。なお父親が誰かは不明。 勿論テーガンは子供たちに魔法を伝授しており、子供たちは母には及ばずとも幻覚や変身魔法を巧みに扱う。 アニメではテーガン自身も、テーガン以上に厳しかった母親に師事して魔女になった事が言及されている。 モンスターブックではこの件が幾らか掘り下げられており、聡明で善良な魔女だったテーガンの母タムは、 娘の生まれついての悪性に気付いて矯正を試みるも失敗。 テーガンはそのまま家出し行方を晦ませたのだという。 テーガンの好物はカラス。 ジャスミンの友達であるカラスのクリーも、テーガンに家族を喰われてしまった。 またモンスターブックの著者ジョゼフは、タムがカラスに変身する魔法を得意としていたことから、 カラスを好んで食べるという行為は、自分を厳しく躾けようとした母への憎しみの表れではないかと推察している。 傲慢な性格の持ち主で、命があり、美しくて自由なものを何よりも憎んでいる。 そのため100年前に『黄金の街ドール』を『嘆きの湖』に、住んでいたドール族を湖に周辺に住む生物に、族長のナニオンを『ソルディーン』に変えた。 これに怒ったララド族はテーガンに抗議したが、テーガンはそれを無視したあげくララド族から声を奪ってしまった。 このようにただでさえ強かったテーガンだが、影の大王がデルトラへと侵攻した際に手を結ぶ。 影の大王に協力する代わりに力を分けてもらい、昔の10倍もの魔力を有するようになり、その力を盾にデルトラ北部を支配下に置いた。 強力な魔力を手に入れた引き換えに「血を一滴でも流せば即死する」という体質になってしまったものの、全身を魔法で武装しているため並大抵のことでは血を流さない。 そのため何人ものララド族の戦士がテーガンに挑むも敗北している。 しかし、実はテーガンは左手の小指の先から魔法を使うのだが、そのためこの小指だけは魔法で庇いきれない唯一の急所だった。 そのため油断していた一瞬の隙にクリーの嘴で刺された事で血を流し、死に絶えた。 テーガンが死んだことで維持されてきたドールの街やララド族への魔法も効力が絶え、無事元の平和が訪れたのであった。 原作ではこれで出番終了だが、アニメではテーガンの遺体で唯一残っていた指輪から影の大王が蘇生させた。 以降は影の大王の命令で行動するが、当人的には「部下」ではなくあくまで「協力者」という認識らしく、側近のファローら他の部下達のように大王に特に諂う事はしない。 デル城の謁見室でも(流石に不遜とまでは行かないが)対等のような口を利いている。 またそのファローとは非常に折り合いが悪く、「お前の指図は受けない」と面と向かって威圧すらしている。 自分を殺したリーフ一行を子供達と罠にはめて殺そうとするも失敗し、ラピスラズリの魔除けの力で魔力を取られ、またしても指を攻撃され殺されてしまった。 もう一度大王に蘇らせてもらうものの、二度も失敗したとあって愛想を尽かし始めていた大王から「その美貌を失いたくなければ今度こそ奴らを倒せ」と事実上の最後通告を突きつけられる。 ここで負ければ後は無い……焦りと怒りに駆られながらも三度リーフ一行に挑み、分断したうえで彼らの抹殺を試みるがまたしても失敗し、本来の老婆の姿に戻されたことで絶望。 自暴自棄になって魔力を暴走させ自殺しようとするが、生き残っていた子供たちが母の後を追って魔力の暴走の中に飛び込んできたことで理性を取り戻す。 最後は子供達と共に浄化されていった―― ■子供達 出典:デルトラクエスト、22話『魔女テーガンの復活』、2007年1月6日~2008年3月29日まで放送。OLM、テレビ愛知、電通、デルトラクエスト製作委員会、(C)2006デルトラクエスト製作委員会・テレビ愛知 テーガンの子供達。全員母とは似ても似つかない怪物。本当にどんな父親だよ。 魔法も使え、幻覚や変身魔法が得意。本編では狼や人間に変身していた。 13人もいるが、その内双子の組み合わせが幾つもある。 すぐに仲間割れをするので兄妹仲は(双子を除き)あまりヨロシクないようだが、母の事はちゃんと慕っており、復讐のために一丸となる。 作中では母の仇を取るためにリーフたちを生け捕りにしたが、三人をどのように配分するかで揉める。 そこでリーフたちが「人数を減らせば、等分できる」と仲間割れするように誘導した事で喧嘩が始まる。 最終的にイカボッドが他の兄妹をノしたことでイカボッド以外の出番は終了。 原作ではイカボッドに倒された連中が死んでいるのか生きているのか不明。アニメではその後も出番がある。 兄妹の順番は不明。ここでは作中の歌の通りに記載している。 ホット トット CV:近藤孝行(ホット)、谷口節(トット) 兄妹で一番小さい。黄色の体にモヒカンという特徴を持つ。 アニメでは堪え性がなく、母に「生きて自分の元へ連れてこい」という命令をされたのに、連れてくる前にリーフたちを食べようとしたほど。 魔法で狼の他、フランソワーズの帽子や鞄に化けた。 アニメではラピスラズリの力で暴走したテーガンの魔法によって消滅してしまう。 ジニ ジッド CV:真山亜子(ジニ) 、樫井笙人(ジッド) 最初に登場した子供達。双子の兄妹でありジニが妹でジッドが兄。 ジニはずんぐりした体型に黄色い牙が生えた怪物。ジッドは体にこぶが盛り上がり蛇のような舌を持ち、歯の代わりに口内に鉄釘を打ち込んでいる。 この二人は人間の老人に化け、周囲が底なし沼に囲まれた家に住んでいる。 彼らは底なし沼に気付かず死にかけた人をあえて助け、それで二人を信用した人間に睡眠薬を盛り、眠った所を食す。 この獲物が小柄で食う部分が少ないと奴隷にする。 最後は底なし沼の底がある部分の目印を変えられたことで自分達が引っ掛かってしまい、沼に沈んで死んでしまう。 アニメでは死後魂だけとなって、他の子供達に協力する……が、イカボット達の単純さに苦言を呈する事も。 フィー フライ CV:伊東みやこ(フィー)、池田千草(フライ) 緑色の巨体の怪物。 原作ではフライの方が兄だが、アニメでは声的に姉妹かもしれない。 アニメではリーフたちをテーガンの元へ連れて行くために、フランソワーズという美少女に変身する。 ホット達と同様に暴走に巻き込まれて死亡。 なおアニメで演じる二人はフィリとクリーの二匹コンビだったりする。 ザン CV:太田哲治 紫色のデカい怪物。ピクたちより上の兄妹らしい。 足が六本もあり『六本足のザン』と呼ばれる。 リーフ一行の配分を決めるさいにフィーを気絶させた。 ゾッド CV:三宅華也 灰色の怪物。体がこぶのように盛り上がっている。 リーフをシチューの具にしたがっていた。 アニメでは「あたし」と言っているので女の子のようだ。 ピク スニック CV:園部好徳(ピク)、伊東みやこ(スニック) 毛むくじゃらの双子。体はそっくりだが顔の造形は割と違う。 ピクの方は牙が二本だけで口が長いが、スニックは角も二本あり口は伸びていない。 ジャスミンを「痩せっぽっち」だからとスープの出汁にしたがっていた。 アニメではプランディンに変身し、バルダと戦う。 ラン ロッド CV:池田千草(ラン)、保村真(ロッド) 茶色の怪物。こちらも体がボコボコしている。 バルダを丸焼きにして食いたがっていた。 アニメではイカボッドと手を組み巨大な蜘蛛に変身してリーフ一行を襲う。 イカボッド CV:郷里大輔 兄妹で一番大きい赤色の怪物。喧嘩の腕も兄妹で一番。 性格は暴力的であり、兄弟たち皆から嫌われている。自分で自分を嫌われ者と歌っているのはどんな心境なのだろう? 原作では出番が少ない子供たちの中で一番多く、終盤にベタクサ村を襲撃してデインをさらう。 最後はスカールに敗北して死亡。 追記・修正はカラスを丸呑みしてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 双子を除き、全員父親が違ってると考えるのが自然か... -- 名無しさん (2022-01-21 02 15 08) 原作だと2巻冒頭の早い段階で「恐ろしい魔女」として名前が出てくるも、本人の出番は10ページ足らずという -- 名無しさん (2022-01-21 22 09 20) 名前 コメント
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雪女、メリーさんから変化 初期装備=魔女の帽子、魔女のホウキ 一度作成すればGPショップにて270GPで購入可能 名称 攻撃力 攻撃範囲 攻撃速度 移動速度 レア度 魔女 27 22 27 29 B 怨念 未練 愛情 呪い 邪気 活発 天然 冷静 消費魂 攻撃タイプ 0 0 0 0 0 5 11 24 14 遠距離 おばけスキル 範囲内のおばけは攻撃範囲2上昇
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女の魔法使いという意味ではなく原始より魔法に寄り添うものの事をさす 無慈悲で容赦を知らない 最古のシーカーにしてムーンウォークの住人 真性の魔法使いとはもとは魔女のことをさすものだった。 エレヴォワナ、ミンシストル、シンシアルータの三人が作中で明言された魔女。
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「そうやってアタシの前に立つってことはそういうことだと思っていいのかしら」 場所は光と闇、空と大地が交錯する世界の何処か。 黒衣の美女が首を傾げている。 話しかけられたのはトレンチコートに身を固めた男。 その容貌は女かと見紛うばかりの秀麗さ。 手に持ったトランプのカードを華麗な手捌きで弄んでいる。 「ええ、そういうことだと思って頂いて結構です、ミティ様」 「アタシだとわかっていながら、そういうことに持ち込むなんてあんたも酔狂だね」 「あなたがミティ様だからこそ、そういうことに持ち込むのです」 淑女をエスコートするかのような物腰を崩さない男。 しかし時折赤く光る妖しい目は、男が尋常で在らざる存在だということを、慎ましげに物語っている。 「アンタ、何ていう名前なの」 「私などの名前を訊いてどうされるおつもりですか」 「今日のアタシはいつもよりも随分と機嫌が良いもんでね」 「ほぅ、見目麗しいミティ様がいつにもましてご機嫌がよろしいとは何よりのことで」 「だからさ、サービスでアンタの墓石にアンタの名前を刻んであげようかと思ってね」 女がその美貌とはおよそ似つかわしくない不穏な言葉を耳にすると、それまで優雅な態度を守ってきた男が一変した。 「墓だとぉぉぉ。 墓碑銘を刻むぅぅぅ。このクソ女がぁぁぁぁ。 こちらが下手に出てやったらつけあがりやがって。 このアバズレの淫売がどの口でそんなことをホザきやがるぅぅぅ」 「ふん、どうやら地金が出てきたみたいじゃないか」 「魔女なんて時代錯誤の通り名を使う貴様ごときが、この俺を倒すなんておこがましいんだよ。 しかも、ミティだとぉぉぉっ。 そんなふざけ名前の女に名乗る名前など持ち合わせていない」 男の手からカードが1枚、ミティと名乗る女に向けて飛び立った。 轟音と共に土煙が舞い上がる。塞がる視界。 やがて視界が戻ったとき、ミティの立っていた地表には、サッカーボールぐらいの穴が穿たれていた。 その穴の数メートル後方に、ミティが平然と立っていた。 「なるほど、カードをジャグリングしながらエネルギーを注入したのか」 「ご明察だ。 俺はこの手に触れたありとあらゆる物質に破壊エネルギーをチャージする事が出来る。 中々に使い勝手がいいチカラだが、一つだけ欠点がある」 マジシャンのような手さばきでカードを中に舞わせながら、男はぼやく。 「チャージ出来るエネルギーと物質の質量が比例するということだ」 「あん、何言ってんだお前はよぉー」 「つまりだ、このカードのように美しく機能的なものよりも、無粋で無骨極まりない石ころの方が、破壊力が大きいってことだ。 そんなの許せねえっ」 今度は3枚。 軌道と高さを変えて、ミティの元へ向かう。 歴戦の魔女も為す術も無く、破壊のチカラに晒されるばかりかと思われたが。 3枚のカードは魔女が出現させた氷壁を砕き、破片を散らせただけだった。 「どうしたい、優男。 威勢がいいのは口だけかい」 …詠唱破棄であれだけの氷隗を瞬時に生成するとは、デタラメな魔女だ。 自分の名前を知らない男。 何処で生まれたのかさえも知らない。何処へ向かうのかも知らない。 なのに、目の前の女の名は知っていた。 自分の身に帯びたチカラの使い方も知っている。 そして、この世界で果たすべきこと。 「魔女なんて中世の遺物など滅んでしまえばいい」 宙で舞わせているカードを高速で回転させ、最大限のエネルギーをチャージする。 魔女の根絶。 それこそが自分の使命。 眼前の魔女を狩ることが自分の存在意義に他ならない。 「行くぞっ」 崩壊の力が籠められた48枚の魔弾が一斉に放たれた。 「・・・ぎゃあああああああ!!!」 黒衣の魔女の叫びが大地に吸い込まれていく。 「足が・・・アタシの足がぁあああああああ!!!」 “破壊エネルギー”がチャージさせられたカードの攻撃は、氷壁を貫き魔女の身体を傷つけた。 中でも両足に受けたダメージが大きかった。 体を支えることが出来ず転びまどう魔女。 「ミティ様。 そのような身なりで地面を転げ回るとははしたないですぞ」 自らの勝利を確信した男は、慇懃無礼な態度に戻る。 懐から新しいカードのセットを取り出し開封する。 「ひぃぃぃっ、ぎゃあああああっ!!!」 魔女の右腕に新たな一撃が炸裂した。 「まったくもって口ほどにもない。 本当に貴女は氷の魔女として恐れられている方なのですかな」 ゆっくりと魔女に歩み寄る男。 「ひゃぁああああああっ!」 空気中の水分を凝縮、再構成して創り出した氷の槍で反撃を試みる魔女だったが。 小脇に抱えていたステッキで魔女の起死回生の攻撃を打ち砕く男。 自らの終わりを予期したのだろうか、狂気に満ちた笑い声を上げる魔女。 「あは、あは、あははは、あははははははは、ふは、ふはははははははははは」 そんな魔女を冷然と見つめる男。 「ふはははははははははは、ぐわぁははははははははははっ。 あははははははははははは、ひはははははははっはあははっ。 楽しい、実に楽しい。 こんなに楽しいのは久しぶりだ。 うわははははははははは、楽しいぞ、全くもって楽しいぞ。 おい、お前。 優男、お前の名は何という」 気圧されてしまった。 新聞紙で叩き潰された断末魔のゴキブリのような状態の女に畏怖を覚えてしまった。 「苦痛と死の恐怖で忘れてしまったのか。 お前などに名乗る名は持ち合わせていな・・」 「そうか、名無しの案山子野郎か。 つまらない奴だ。 まあいい、おめでとう、案山子君。 第一ラウンドはお前のものだ。 ではこれより第二ラウンドを始めよう。今度は人外の闘争を楽しもうじゃないか」 魔女を中心に圧迫感と共に目に見えない気配がタールの如く大地に漏れ出し、拡がっていく。 魔女が唯一自由の利く左腕を天にかざすと同時に、体中の疵口から漆黒の霧が立ち上がった。 眩霧―魔女がその犠牲者を異界に誘い込む際に発生させる幻の霧だ。 こんこんと湧き出る霧に魔女の姿が一瞬霞む。 そして、魔女の肉体がバラバラと音を立てて崩れたかと思うと夥しい数の毒虫、大鴉の群れへと姿を変えた。 毒虫達はぞわぞわとおぞましい音を立てながら地を這い回り、大鴉は不吉な鳴き声を上げながら辺りを舞う。 「何……これは一体どうしたことだ……」 夥しい大鴉の羽ばたきの中を縫って、妖しく赤く光る男の目。 黒い羽を残し、数十羽の大鴉を消し去ったが、余りにも数が多すぎて、到底減ったようには見えない。 宙を舞う黒い羽は地に落ちると、毒虫に姿を変え自らを裂いた煌きの発生源である男を追う。 気がつけば禍々しい瘴気を放つ毒虫の川が男を取り囲もうとしている。 大鴉達を引き付けて、ステッキで薙ぎ払いながらその間を駆け抜ける。 「ひぃがぁぁぁーっ」 過って毒虫の川に踏み込んでしまった右足が激痛を訴える。 ほんの僅か、靴の爪先が触れてしまっただけなのに、その部分は焼けただれてしまっている。 ステッキを本来の用途で用いながら、毒虫の川の切れ目を捜し退路を探る。 襲い来る大鴉の嘴を防ぐことも叶わず、体中は啄ばまれ、洒脱なトレンチコートは襤褸きれに変わり果てていた。 …落ち着け、これは幻戯に過ぎない。 魔女の本体がどこかに潜んでいるはずだ。 その本体を叩けば…しかし、どうやって捜す。 それ以前に、どうやって大鴉と毒虫から難を逃れる。 痛みの範囲は段々と広がっている。 この分では体の中枢を蝕まれるのも時間の問題だ。 ―来る。 何かの襲来する気配を感じた。 己の肉体の数倍近い大きさの氷塊が頭上から降ってくる。 …くっ、間に合え。 痛む右足に体重がかかってしまうのにも構わずに、ステッキを回転させて破壊エネルギーをチャージしてぶつけた。 弾けろ! 窮余の一手は功を奏したが、その代償も大きかった。 自らの間近で生じた激突と破壊の衝撃を受けて吹き飛ばされてしまう男。 「ぐわぁぁぁぁーっ」 両腕は毒虫の河に浸り、その瘴気で侵された。 もう顔を狙う大鴉の嘴から、身を守ることも出来ない。 為すがままに顔面を啄ばまれ、滴り落ちる血で視界を塞がれる。 ……… 攻撃が止んだ。 体中を走る激痛は変わらないが、新手の攻撃は行われなくなった。 しかし大鴉や毒虫の放つ禍々しい気配が去ったわけではない。 むしろ、より密度が高くなっていくのを感じる。 自分の間近に結集しつつあるのを感じる。 「何なんだ。 お前一体何なんだ」 男の声は悲痛な響きに変わっていた。 「どうした。 優男。 アタシをどうにかするつもりだったんじゃないのか」 魔女の声がする。 恐る恐る目を開く。 目に血が入り痛んだが、気にもならなかった。 男から10メートルばかり離れたところでは無数の毒虫が結集して、女の肉体の形を模ろうとしていた。 しかしその肌の表面はおぞましい毒虫の姿のままで、無数の足が繊毛のように蠢いていた。 「お前は何なんだ一体。 いや、お前は身体の中に何を飼ってるんだ」 魔女の形をした毒虫の群団が声を発した。 「ほう、お前には見えるのか。 アタシの中にいるやつのことが」 どこか感心したような響きは、この場には似つかわしくない。 「ああ、見えるとも、おぞましい化け物の姿が。 感じるとも、とてつもなく邪悪な存在を」 「かつて、世界の半分を滅亡の危機に陥れた存在があった。 人間への憎悪、世界への呪詛。 その存在は世界にとって災厄そのものだった。 その名はへケート。 月を司る冥府神の一柱にして、妖怪変化の女王、そして黒魔術の本尊」 「バカな、そんなやつがお前の中に巣食っているというのか。 有り得ない」 醜悪な毒虫の群団から、元の美しい女へ着々と姿を変えつつある存在は、男を憐れむような口ぶりだった。 「志を遂げることなくその最期を迎えたヘケートは自らの記憶を情報化した。 人をチカラに目覚めさせる為に、脳のどの部位を圧せばいいかという該博的な知識。 チカラを具現化する技術としての、魔術に関する膨大な学識。 そして、何よりも人間に対する圧倒的なまでの悪意。 それらは二進数で暗号化して、人間伝いに継承されていった」 「お、お前も継承者の一人だというのか」 「アタシは簒奪者」 「簒奪者だと」 「暗号化されたヘケートの記憶は、継承者の心臓のパルスに変換される。 つまり、継承者は脈打つ心臓に膨大な情報を保管した記録装置として、その生涯を送ることになる。 情報をコピーする次の継承者が現れるまで」 「黒魔術を学び、ヘケートに関して研究を重ねた人間はその事実に突き当たる。 私もその一人だ。 そして、私は奪った。 ヘケートの記憶を内に秘めた人間の心臓をな」 男はミティと会話をする中で反撃の機会を窺っていた。 何かに触れて、運動エネルギーを与え、破壊エネルギーへの変換と蓄積を行おうとしたが、傷口から侵食し始めている魔女の瘴気は腕の感覚を奪っていた。 闘争の敗北は認めよう、しかし魔女への敵意を消すことは出来ない。 そしてその思いを魔女の論説への反駁という形で晴らそうとする。 「…あ、有り得ない。 そんな莫大な知識と途轍もない憎悪を一身に受けて平気でいられるなんて有り得ない」 「平気なもんか」 魔女が自分の言葉に賛同したことに耳を疑う男。 「平気なんかじゃない。 クソババアは、油断していたらアタシの自我を飲み込んで、アタシの存在に取って代わろうとしている。 だから、アタシもそれなりの手を打たなけりゃならなかった。 ヘケートの記憶を利用して、黒魔術を操るアタシに、アタシは本来の自分とは別の名前をつけることにした。それがミティ。 命名とは呪縛、そして支配権の確立。 アタシ、藤本美貴は氷の魔女ミティの主、そしてミティは藤本美貴の忠実な僕。 黒魔術を行使するミティを別人格として隔離して支配することでアタシはヘケートの侵食から逃れられている。 まあ言ってみれば、病院の無菌室みたいなもんさ。 ミティという隔離室によって、ヘケートというウィルスの感染を防いでる、みたいな」 毒虫の群団は、女の姿形を復元することに成功していた。 女の名は、ミティ? それとも藤本美貴? それとも…。 瘴気に体中を侵された男に、女は宣告した。 「お前、名前は無いんだったな。 つまんねえ男だ。だったら、墓は要らないな。 粉々にして鴉どもの餌にしてやるよ。そして、地獄に落ちて蛆虫になりな」 男の目に映ったのは、瞬時に凍結させた大地を滑走して、殺到してくる女の姿だった。 宙に舞い上がった女の両膝が迫ってくるのが、男が目にした生涯最後の光景だった。 …思い出した、俺の名はRemy LeBe・・・ ぐしゃりと押し潰した男の頭蓋から飛び出した脳漿が大地に飛び散った。 争うように群がる大鴉たち。 ぴちゃぴちゃと啄ばむ音、ばたばたと羽同士が触れ合う音が収まってくるに連れて、霧も晴れてきた。 男の残骸に無感動な一瞥を送ると、魔女はその場を去ろうとする。 ……随分な言われようだな。 妖怪変化の女王だとか、クソババアとか。 挙句の果てにはウィルスだの黴菌扱いか。 私はお前よりも若いというのに余りな仕打ちではないか。 魔女に話しかける声。 それが現実にそこに響いている声なのか、魔女の意識に直接訴えている声なのかは魔女自身にもわからない。 「違ぇーよ、ババア。テメエ生まれたのはいつだっつーの。 くたばった時点で時計を止めんなっつーの」 まるで友人に話しかけるような口ぶりで、見えない存在に答える。 …藤本美貴。 人類の歴史の中で私の記憶を継承した他の誰よりも、お前は世界を憎み、チカラを渇望している。 ならば何故こんなまどろっこしい手段を講じる。 ミティなどというくだらん仮想の人格に、私のチカラを委ねるのだ。 お前が直接私のチカラを行使すれば、お前はこの世界を壊せるというのに。 「くだらん言うな」 ポツリと呟く。 「意味がねーんだよ。 どんなに強いチカラを手にしたところでアタシがアタシでなくなっちゃ意味がねーんだよ」 …青いな。それがお前の弱さだ、しかし同時に強さなのか。 「ババア、テメエこそさっきアタシの足を引っ張って、そいつに勝たせようとしたな。 あの野郎の赤い瞳に心奪われたのか? さしずめ老いらくの恋っってところか、あぁん」 …ババア言うな。 確かにあの者の瞳には心焦がす力があるが…私の欲しいものが何か、お前にはわかってるだろう 「渡さねえよ、この身体も、心も。 お前はこの先ずーっとアタシがこき使ってやる」 …どうかな。 いくら抗ったところでお前の心に力への渇望がある限り、結局は収まるべきところへ収まるだろう。 自らの意思で闇に足を踏み入れた人間は、決して光の下で生きていくことは出来ない。 「関係ねーよ。 闇も光も。 悪も正義も関係ねーよ。 この先、何があろうと、何処へ行こうとアタシはアタシさ」 霧が晴れ、声が途絶えた。 光と闇、空と大地が交錯する場所を目指して、魔女は歩き始める。 己自身の掌に、己自身を握り締めながら。
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ラノで読む(前中後編+おまけ) 【魔女と空】 前編 「空では一人で飛んで一人で死ぬ――それが魔女の誇りよ」 そう言って天を睨みつける彼女は美しかった。 だがそこに痛々しさを感じてしまったのは錯覚だったろうか? 久世空太(くぜ そらた)の最も古い記憶は、父の肩の上で見上げた真っ白な飛行機の姿である。 青い空に音もなく舞い上がっていく飛行機に手を差し伸ばし、いつか自分もあの場所へ――そう願っていた空太の手は今、夢を掴むことなくラルヴァを撃ち落とすべく突き出されていた。 人差し指と中指を揃えて伸ばし、親指を立てる変則的な指鉄砲。その先から青白い閃光が放たれる。 バババっと三連射。 しかしどれもラルヴァの身体を掠めるだけで命中しない。 「下手くそっ! ちゃんと狙いなさいよ!」 「ならもっと機体を安定させてくれっ!」 少女の罵声に負けじと叫び返す。 機体と呼んだが今、空太が乗っているのは残念ながら飛行機ではない。 少女の操る箒の上だ。 ――魔女(ウィッチ)。多くの異能者を擁する双葉学園においても飛行能力者は少ない。そのなかでも特に異彩を放つのがこの魔女であった。 「おい、引き離されているぞ!」 「うるさいっ! アンタなんか載せてるからでしょう!」 空太に叫び返すのは瀬野葉月(せの はづき)。魔女のなかでもトップクラスの才能をもつ少女だ。 戦場は雲海。この高度とスピードは他の魔女達には到達できない境地だ。 だが景色を楽しむ余裕など微塵もなく、敵を追う目は雲すら透かさんと追い続けている。 「障壁をもっと弱めてくれ! 光弾の軌道がずれる!」 「このスピードで弱めたらアンタ、ふっ飛ばされるわよ! そんなこともわかんないの!?」 葉月の言うことはもっともだ。魔女が箒に跨るという行為によってひとつの結界のような力場を形成する。それがあるからこそ風圧など様々な問題を超えて高速で飛行出来ているのである。 「分かった。ならせめてもっと接近してくれ。これ以上射程を伸ばすと当たっても効きそうにない」 叫びたいのを我慢して返す。冷静にならなければいけない時にはそうすることが出きるのが空太という人間であった。 「私一人だったらあんな奴すぐにでも落とせるのに!」 そして一見クールに見えて激しやすいのが葉月という少女である。 「無茶言うなよ。とにかく、もう一度接近しよう。奴の頭の向きを見逃すなよ」 「そっちこそ次は当ててよね!」 葉月の言葉とともに箒ごと前傾する。空太は葉月の腰にまわした腕に力をこめる。最初に感じた少女のぬくもりにドキドキするような余裕はもうない。 二人を乗せた箒がさらに加速した。 久世空太が異能に目覚めてから二年ほどになる。 そのパラノーマルアビリティは光撃(こうげき)と呼ばれるタイプのもので、物理的な破壊力を持った光線を発するという能力であった。 空太は主に指先から光を発し、それを誘導するようなことは出来なかったが高い破壊力と速射能力を持っている。 そして適正があったのだろう、初めて発現した時から驚くべき早さでその異能を使いこなしていった。 生身で重火器並みの破壊力を持ち、発動に難しい条件をもたず、ほとんどのラルヴァに効果を発揮するということで、この異能持ちは実戦では重宝されている。空太が短期間で多くの経験を積んできたのもそのためだ。 それはすなわち、一人の少年がいやがおうにも戦士として生きていくことが定められたという事である。 いつか、空に駆け上がる日がくる。そう願い、そのための努力もしてきた。 それがほんの少し日常から外れた瞬間に指先から零れ落ちてしまった。 ラルヴァの危険性はよく知っている。実際に戦いの場に身をおくようになり、それと戦う者の存在が人の世界に必要だということも分かる。 だからこそ双葉学園でのカリキュラムも真剣に受け、己を鍛えることを厭わなかった。 戦うことが嫌なわけでもない。ラルヴァに襲われた一般人を助けたことも何度もあるし、共に戦う仲間達のことも大切だと思っている。 それでも。 「ちくしょう、いい天気だなぁ」 放課後の暇な時間、こうして空を見上げることが多くなった。 かつてはそこに自らがいることを疑わなかった場所。 今は遠くにあって羨望のまなざしを向けるところ。 初恋のようなものだ。決して想いが叶うことはなく、年を重ねるごとに振り返っては懐かしさを確かめるもの。 そんな風に自嘲して諦めている自分がいる。 もう自分は出来る事としなければいけない事を知っている。夢を好きだという気持ちだけで求めてはいられなかった。 「あ……」 見上げた空に光が見えた。 複数の光。青や赤。金色に緑色などさまざまな光がいくつも青い空に舞っている。 それは明らかに航空機の動きとは違った軌跡を描いていた。 「魔女、か」 ――魔女(ウィッチ)。 パラノーマルアビリティとしては特定のアイテムを使用することで発揮される異能とされるが、彼女達は自らを誇りをこめて魔女と呼ぶ。 そう。彼女らはまさに魔女の名の通り、箒に跨って空を飛ぶのだ。 魔女といっても異能としてはあくまで空を飛ぶだけだ。怪しげな魔法や薬を使ったりはしない。 とはいえその能力は非常に有用であった。 実戦では主に偵察や輸送要員として活用されているが、飛行型ラルヴァに対して対応可能な異能としても高い評価を得ている。 何しろ新幹線に並走できる速度を持ち、ヘリコプターよりも高い運動性でどこにでも離着陸ができるのだ。ただ飛ぶだけなどとバカにする者はいない。 今空太が見ているのはまだレベルが低い魔女達なのだろう。どれも動きが頼りない。 魔女達がいう「魔力」が粒子となって光を放って尾を引き、空に軌跡を描いている。その色がさまざまなのは個人差なのだろうか。 「いいよな」 ぽつりと言葉がでた。 空を自由に飛ぶというのは多くの人間が抱く幻想だ。それを実際にやってのける者がいるとなればうらやむのも当然だろう。 「一人だけ動きが違うな。あれが教官か?」 見上げる先にはひときわ目立つ赤い光。他の魔女達よりも高く、速く宙を舞っていた。 他の魔女はそれを追うように飛んでいるがまるで追いつけていない。 「青いの動きは安定してるがえらく遅いな。緑は妙にふらついてるし、紫はなんかおっかなびっくりだし金色はビリヤードの玉じゃないんだからそんなに直角に曲がらんでも」 自分が初めてパラグライダーで飛んだ時を思い出しながら好き勝手に批評を続ける。 編隊飛行もままならず、まるでカルガモの親子の行進のようにヨタヨタと空を飛ぶ魔女達は、幻想的ではあったが笑いを誘うものがあった。 ひょっとすると、いつかその後ろに乗らせてもらう機会があるかもしれない。 そんな空想を携帯の着信音が吹き飛ばした。 「──非常召集」 学園の多くの異能者達はまだ訓練生といったレベルでそうそう実戦に赴くことはない。出かけてもせいぜいバックアップとして現場の空気を知るための経験値稼ぎといったところだ。しかし空太はすでに前線で戦う戦士として派遣されるレベルに達していた。 その空太が召集されたということは間違いなくすぐさま実戦に投入されるということだ。 空太は携帯をしまうと指定された集合場所へ向かって駆け出した。 一度振り返って魔女達を見上げてみるが、着陸したのか空にはその輝きは見られなかった。 集合場所に集まった面子は自分を含めて五名。どれも知った顔だった。そのなかでも三島大地(みしま だいち)という少年は何度もチームを組んだことがある馴染みの顔だった。 「よう久世。お前がいなきゃハーレムだったんだがなぁ」 と開口一番におどける大地。他の三名の少女達も召集されたというのに慣れたものかその様子に笑いを浮かべる余裕すらあった。 「それにしても射撃系ばっかだな」 自分の光撃をはじめとして大地の雷球、他の三人も霊弓や神銃の使い手だ。共通しているのは射撃系、しかも実弾を必要としないものだ。──つまり。 「軽量装備でなおかつ遠距離ってことは、よっぽど足場の悪いところで戦うってことか」 夜の農道を走る軽トラックの荷台の上で戦ったことを思い出す。 「わたし、建設中のビルの上で戦ったことあるよ」 「あたしはモーターボートの上」 「お前らはまだいいって、俺なんかヘリコプターからつり下げられた状態で戦わされたぞ」 「私はバイクの後ろですね」 などと自らの経験を笑いまじりで語り合う。良い意味で力の抜けた面々であった。 「おっと、お出迎えよ」 そう待つ事なく、その場に迎えのバンが到着した。運転しているのは組織の職員だ。 「お願いします」 ひと声かけて乗り込む。運転手はこれから埠頭へ向かい、他のスタッフと合流すると言う。 「やっぱり船の上かなぁ」 そうごちる少女だが、あらためて運転手に質問したりはしない。教えてくれるなら最初から言うものだと知っているからだ。 「ちょっと三島、あんまりくっつかないでよね」 「安心しろ。俺はバストサイズが85以下の女には興味がない」 「死ねっ」 「女の敵ね」 「あの、近くに寄らないでください」 齢相応のじゃれあいに空太も苦笑する。これから向かうのは死地であるが、張りつめた状態では気力が続かないと誰もが分かっているのだ。 頼もしい仲間に安心しつつ、どういった敵とどのような状況で戦うことになり、どう対応するのが良いかとシミュレートを始める。異能とはいっても万能ではないし、一人で出来ることなどたかがしれている。 力を合わせないと生き残れない。それを経験から学び、常に考えるようになっていた。またそれが出来る才能が空太の評価を高め、こうして頻繁に呼び出されることになっていた。 (どうせならもっと別の方面で才能が欲しかったけどな) そう心の中で愚痴をこぼしてみても、身体に染み付いた戦士としての本能は、これからの戦いにむけて備えることをやめはしなかった。 やがてバンは埠頭に到着し、その一角で空太達五人を降ろして去っていった。 「ねえ、あれって」 「うん、……だねぇ」 そこには十数人の大人達と数人の少年少女達が作業をしていた。テントはすでに組立てられ、仮設指揮所らしきものができあがりつつある。 そしてそれを脇に立って眺めている数名の女生徒。──魔女達がいた。 「魔女か……」 六名の魔女。魔女だと分かるのはその格好だ。いかにも魔女らしい黒い三角帽子とマントを身につけ、手には帚を持ってる。 ただ魔女達のほとんどがジャージを着ていることがユーモラスであった。 「あ、ひょっとしてさっき飛んでいた連中か?」 確かにこちらが車で移動する時間があれば、空を飛んで先に到着していてもおかしくはない。 魔女のうちの一人が空太達の方を向き、声をかけてくる。 「よく来てくれた。私が今回の責任者である柊キリエだ。よろしく頼む」 そう名乗った女性は堅い口調でそう言った。 背が高い。180センチはあるだろう、この場の誰よりも長身である。髪はベリーショート。銀髪で目は青い。柊と名乗ったがどう見ても日本人ではない。その眼鏡の奥の眼光にはつい姿勢を正して敬礼すらしてしまいそうな迫力があった。 「そう硬くならなくていい。こう見えても私もまだ学生で君達とそう齢も違わない。療養中なため今日は直接参加はせずに指揮だけをとる」 見ればマントの下はブレザーである。そして包帯を巻いた右腕を吊り、帚の代わりにアルミ製の杖を付いている。足にも包帯が巻かれていた。 「久世です。こちらこそ宜しく。知っていると思いますがこちらの五名は顔見知りで、バラバラですが何度か一緒に討伐に参加しています」 どうやら相当の手練であるらしいキリエに空太が代表して声をかける。 「ああ知っている。今回のメンバーはきちんと吟味したうえでの人選だ。紹介しておこう、うちの後輩達だ」 キリエに促されて後ろの魔女達が頭をさげる。 ジャージ姿の四人は見るからに緊張しているが、一人だけ制服の少女は不機嫌そうに顔をそらしていた。 「先に言っておく。魔女と射撃系異能者の組み合わせで分かる通り、キミ達には空中戦をやってもらう」 キリエは全員を一瞥するとそう言い放った。 それぞれ簡単な自己紹介の後、ブリーフィングが行われる。テントの下の仮設指揮所でキリエから概要が説明された。 討伐対象は『コルウス』。そう分類されるラルヴァだ。ラテン語でカラスを意味する。 名前の通りカラスに似た外見で、広げた翼の先から先まで二メートル前後の大きさ。巨大化して凶暴になったカラスといったところだ。事実本物のカラスがラルヴァ化したとの説もある。そして厄介なことにカラス同様に知能も高く群れを作る。 通常の武器での殺傷は可能だが、かなりの高高度と長距離の飛行ができ取り逃がすことも多いという。 「そのコルウスの群れが現在双葉区に向けて飛行中だ」 「なんで学園に?」 「そういえば最近学園内でもちょくちょく出現してますね……」 「学園は海からの霊脈の流れの上にありますから。海の方角からの妖魔の類いはそれに沿って東京方面に向かうという説もあります。それこそが学園がここに建設された理由だとも聞きますね」 「その辺に関してはこの際おいておく。確認されている群れは50羽ほどのもので、海上のこの付近の上空を移動していると予想される」 ディスプレイ上のマップを指差して言う。かなり曖昧だ。 「今は追跡していないんですか?」 「あの、先輩達や防空隊の仕事じゃないんですか?」 空太の質問を遮って魔女の一人が問う。聞けば誰もまだ実戦に参加したことがないという。動揺するのも当然であろう。 「他の魔女と防空隊は別任務で出動中だ。その警戒範囲にコルウスどもがひっかかったというわけだ。向こうは手一杯でこちらに割ける人員はない」 「そんな……」 双葉区外縁部の空港区画には防空隊の秘密基地がある。そこには人を乗せて飛べるほどの式神を使う高位の術者や、小型のジェット戦闘機まで配備されているという噂だ。それらが出動しているという任務が気になるところではあるが……。 「心配するな。この程度の任務はこれくらいの戦力で十分だ」 「ああ、簡単な任務で経験値を稼がせようということですね」 「そんなところだ」 空太がキリエのフォローをする。手が足りていないというのが事実であろう。キリエの言葉も正しいが本来ならば経験を積んだ上級生が同行するべきだ。それが出来ないほど防空隊の任務が大変だということだが、不安をあおっても仕方が無い。 「役割についてだが魔女はそのまま魔女、射撃系異能者はガンナーと呼ぶ。二人ひと組でコールサインはレッド、ブルー、グリーン、ゴールド、パープルだ」 「そのままですね」 招集前に見ていた魔女達の魂源力の色のことだろう。 「分かり易いだろう? 咄嗟に名前が出てこないことを考慮してだ。組み合わせはこうだ」 空太の相方はレッド。あの一人だけ抜きん出ていた飛び方をしていた魔女だ。どうやら教官だと思ったのは勘違いだったようだ。 「じゃあよろしくね。金色かぁ。キラキラしてていいよね」 さっそくガンナー役の面々は気さくに話しかけ、緊張をほぐそうと努めている。 「ということでよろしくなウィッチブルー」 「……へんなところ触ったらふり落とします」 「心配ない。俺はバストサイズが85以下の女には興味がない」 「死ねっ」 「女の敵ね」 「あの、近くに寄らないでください」 「おふざけもいいが最後まで聞け。今回のチームリーダーだが、久世。お前だ」 「はい」 「ちょっと待って下さい! なんでこいつなんです!?」 一人の魔女が叫ぶ。レッドである。 ジャージではなく制服を着た少女で、他の魔女と違って緊張もしていなければ怯えてもいなかった。 自己紹介では瀬野葉月(せの はづき)と名乗った。 女性にしては背が高くスタイルもいい。さきほどは大地が「巨乳」と呟いて他の少女達から足を踏まれたほどだ。艶やかな黒髪は背中まで伸び、マントの漆黒にとけ込んで、きつい目元は少女を大人びて見せて可愛さなど微塵もなくまさしく美人と呼ぶべきであった。 そんな美人が不機嫌さを隠しもせずにこいつ呼ばわりするのだから、空太でなくとも鼻白むだろう。 「適任だからだ」 しかしキリエは冷ややかに切って捨てる。 「各自の能力を把握しての配役だ。聞く耳もたん」 「でも……」 なおも食い下がろうとするがキリエの一瞥で口を閉ざす。 「久世は戦闘経験豊富で戦闘能力も高い、しかも何度かチームを率いての任務を成功させている。それをふまえての配役だ」 「……はい」 納得したわけではないだろうがそれ以上の抗弁はない。 「では、装備課の者から装備を受け取って装着。通信機もいつものやつと違うから操作確認を忘れるな」 「はい」 ガンナー達は背筋を伸ばして返事をし、魔女達はそれを見て慌ててならう。軍隊ではないので敬礼はない。 「それと久世には話がある、残れ」 他の者がテントから出て行く。装備といっても魔女と異能による射撃能力持ちなのですぐに済むだろう。 「なんでしょう?」 「ふん」 キリエは空太が落ち着いているのに笑みを浮かべる。この年頃では葉月の態度に怒りをおぼえてもおかしくはないはずだ。 「怒ってはいないんだな」 「ええ。まあ初陣で腕に自信がある奴ってあんなところだと思うので。萎縮するよりはましかと」 「そうか。……瀬野は、な。あれは天才だ」 「天才、ですか」 魔女の天才というのもぴんとこない。 「帚で飛ぶことに関しては本物の『魔女』にも匹敵する。いずれ私よりも上をいくだろう」 どこか嬉しそうなキリエ。自由に空を飛び、そしてその才能がある。それはさすがに空太の心に棘を刺した。 「あれは誰よりも速く誰よりも高く飛ぶ。だがな、空は一人では飛ぶものじゃない。あいつをフォローしてやってくれ」 「それは、分かるような気がします。でも、なんで俺に?」 「そこで分かると言える奴がどれ程いるか……お前の経歴は調べさせてもらった。空を目指しているお前だからこそ分かると言える。だからだよ」 ニヤリと不敵に笑う。美人であるからこそ迫力がある。 「調べたって……」 「あの面子は以前から選別を進めていたということだ。魔女は空を飛ぶことには優れていても、戦うことに特化した異能ではない。せいぜい障壁でコルウスをはじき飛ばす程度が関の山だ」 なるほどと納得する。本来ならばもう少し先で顔合わせや訓練があったのだろうが、状況がそれを前倒しにしてしまったということだ。 「今回のことはいいきっかけとしたい。いきなりですまないが上手くやってくれ」 「分かりました。最善を尽くします」 「いい返事だ。リーダーに向いているなキミは」 「文句を言って状況が良くなるならいくらでもゴネますけどね。ああでもひとつ。目指しているっていうの間違いですよ。さすがにもうやめました」 「ふん」 再びあの不敵な笑み。 「それは違うな。キミに諦めることはできはしない。キミもまた魔女と同じく空に魅入られている。キミは必ず空を目指す」 「それは女のカンですか?」 キリエの青い目から逃げるように背を向ける。 「いいや──魔女としての言葉さ」 「……準備してきます」 空太は逃げるようにテントから離れた。 出発前の準備が始まっていた。 装備課の人間が通信機や端末をメンバーに装着し、その操作説明を行っている。 「あれ、遠野?」 葉月に通信機の操作説明をしていたのはクラスメイトの遠野彼方であった。彼方は異能者ではないし装備課の人間でもない。 「や、おつかれ」 といつものお気楽な笑顔を浮かべる彼方。場の緊張感にまったくそぐわない。 「いや、お使いで来たら手伝わされちゃって」 「いつもそんなだな。で? お使いって?」 あちこちをフラフラ歩いているせいでいいように使い走りを頼まれている友人に苦笑する。 「うん、やっちゃんからの伝言だけど聞く?」 やっちゃんというのは知り合いの予知能力者のあだ名だった。それほど優れた能力者ではなく、的中率も曖昧、予言内容も曖昧といったところだが何かと空太に良くしてくれている。 予知能力は予言を聞くことによってその予知通りの結果を招いてしまう危惧があるため、当事者に伝える際には細心の注意が必要とされる。彼方を経由して伝えようとするのは事前に選択させようという意図からだろう。 「ああ、聞かせてくれ」 やっちゃんの予知は役に立つことはあまりないが心配してくれる心遣いは無駄にはしたくない。 「うん、『落下注意』、だって」 「……そうか、憶えとく」 やっちやんの予言はいつもこんな感じだ。頭上注意とか足元注意、前回は『車に気をつけてね』だった。当たったことは当たっていたが予知というより心配するお母さんの言葉としか思えない。 「あ、そうそう。グリカラの割引券を貰ったんだよね。今日は無理だろうけど今度行こうよ」 大人数が一度に入れる大部屋のあるカラオケ屋のことだ。部屋の使用料だけでなくドリンクも食事も半額だよと笑う彼方。あちこちでお使いを頼まれているがしっかりそのお駄賃は頂いているようだ。 「おう、また今度な」 じゃあね、と言って、てくてくと去っていく彼方。 「どうした?」 キリオに何やら話しかけている彼方を、睨み付けるように見ている葉月の様子に気が付いた。 「どうしたって、なにあれ? これから飛ぶっていう奴に『落下注意』なんて言う?」 「いや、やっちゃんっていうのは予知能力者でさ、討伐に行く時はああいうの教えてくれるんだよ」 「……人ごとだと思って。がんばれの一言も言えないなんて」 「あー……」 えらくイラついてるなぁと頭をかく。 「あいつはあれで普通なんだよ。いつもがんばってる奴にはがんばれとか言わない。必要なら無理も無茶もするし、怪我よりも優先すべきことがあればする。だから気をつけろとも言わないってだけさ」 なにそれと皮肉めいた笑みをうかべる葉月。 「男の友情ってやつ? 僕ら分かってますなんての?」 「がんばれ、気をつけてねって言われて俺の不安が消えるんならそう言うだろうさ。別に男の友情とかどうかじゃなくて普通だろ?」 そこまで言って葉月の態度は実は不安からくるのではないか、と思いついた。そういえばこいつも初陣なんだっけ。 「ま、チームがきちんと機能してればそう危険はないさ。せいぜい慣れない俺達が箒から振り落とされるくらいだろ」 おどけて言った空太の言葉に葉月の顔から表情が消える。 「チーム? 冗談でしょ。仲良しごっこで空は飛べないわ」 「おい」 葉月は空太から顔をそらして空を見上げた。 「憶えておきなさい」 その表情と冷たい声に空太は言葉を失った。 「空では一人で飛んで一人で死ぬ――それが魔女の誇りよ」 そう言って天を睨みつける彼女は美しかった。 だがそこに痛々しさを感じてしまったのは錯覚だったろうか? 葉月を先頭に、上から見下ろして五芒星を描くように立つ魔女達。相方のガンナーがそれぞれその脇で飛行準備を待つ。 初めて目の当たりにする魔女の飛行。しかもそれに同乗するのだ。それに注目するのは当然だ。 葉月は空太の視線を強く感じながらも落ち着いて準備を始める。 個人ごとに持つ始動キーとなる呪文を唱え、横向きに持った帚を宙で手放す。それは地に落ちずにその場に留まった。うっすらと赤色の魔力の輝きが灯る。 すらりとした脚をあげその帚に跨がる。スパッツを履いているので見られても大丈夫。スカートとマントの裾に気をつけてランディングポジションに座る。 魔力──学園が言うところの魂源力を巡らせる。 身体に馴染んだその位置。自分があるべき居場所におさまった安心感。どこまでも飛べるし誰よりも高く速く飛べるという自信が溢れる。 ただひとつの不満はその後ろに他人を乗せなければならないことだ。 「いいわよ」 「ああ」 空太の感覚は、葉月が帚に跨がった瞬間にその周辺が不可視の力場に包まれたのを感じていた。事前の説明では魔女はこの力場そのもので飛ぶということだ。 緊張して帚に跨がる。種類までは分からないが木製の柄に尻を乗せる。 「おお?」 かすかに下がったものの、帚は空太の体重をなんなく受け入れた。鉄棒に跨がって遊んだあの頃のように必死でバランスを取る必要があるかと身構えていたが、頼りない棒にしか見えない柄はしっかりと空太を支えている。その感覚はバイクに近いだろうか。 「思ったよりずっと安定しているんだな」 それどころか下手な作りの椅子などよりも座り心地が良い。 「いいからもっと前に詰めて。バランスが悪い」 不機嫌さを隠さない葉月だが、空太はそれに腹を立てる余裕もなく素直に従う。 「腕はここに。変なとこ触ったら許さないから」 「わかった」 葉月に身を寄せ、両腕を腰にまわす。友人のバイクでタンデムするのと同じだ。 とはいえ触れているのは男ではなく少女の柔らかい身体である。マント越しとはいえ温もりはしっかりと伝わるし、その髪からは良い匂いがする。しかも大地が賞賛したように葉月は巨乳である。ちょっと腕を動かすだけでその弾力を確かめることになりそうだ。 「……むう」 いかんいかんと雑念を払う。ここで迂闊に少年らしい生理現象を発生させてしまっては二度と乗せてもらえないばかりか、この場にいる少女達全員に袋叩きにされかねない。 そういえば同じ男の大地はどうしているだろうかと振り返ってみれば、涼しい顔で年下の魔女に抱きついている。ハズトサイズ85以下には興味ないというのは本当だった。 「いい? 安定するようになっているから少しぐらい手を離しても平気だから。でもスピード上げている時は片手だけでも掴まっていること。聞いてるの?」 「あ、ああ。聞いてる」 こほんとひとつ咳払い。フライト前だ、バカやってないで切り替えろと自分を叱咤する。 「言っておくけど勝手に落ちても助けないからね」 「無茶言うな」 改めてお尻の位置を確認。両足を浮かせてみたが帚は安定している。バイクのように足を乗せるステップがあるわけではない。しかし不思議と両足で踏ん張っているような感覚がある。馬具でいうところの鐙があるかのようだ。 「準備はいい? それじゃあいくわよ」 「オッケー、皆いいな? とりあえず慣れるところから始めよう。20メートルほどまで上昇してくれ」 空太の言葉に後ろから返事が返る。流石にどれも緊張しているのが分かる。 葉月は帚に魔力を送る。バイクのようにアクセルを開けるのとは違う。そっと促すように合図を送るのだ。 「おお」 帚の反応は素直だ。ふわりと30センチほど浮かび上がり、空太が転げ落ちていないのを確認したかのように少し間をおいてから上昇を始める。 周囲から悲鳴と歓声があがる。葉月の帚に続いて他の魔女達の帚も舞い上がった。 「凄いな、これが魔女の帚か……」 感覚はエレベーターの上昇に近い。上から吊り上げられるという感じはなかった。 「こんなの飛んでいるうちにはいらないわよ」 そう言う葉月だが、その表情は先ほどより柔らかい。地から足が離れてしまえば魔女の独断場だ。後ろの荷物への不満も少しは和らぐというものだ。 「はい、これで20メートルよ。どう? 初飛行の感想は?」 高度計があるわけではない。ただ魔女には分かるということらしい。 「スゲぇとしか言えない……正直これは体験してみなけりゃ分からないな」 下を見ればこちらを見上げる人々の顔。その中でひらひらと手を振る彼方がおかしい。こちらも手を振ってやろうかとも思ったが、彼方がキリエに頭をこづかれているのを見てやめた。 「よし。それじゃあ、ゆっくりと螺旋機動で上昇してくれ。ガンナーはいまのうちに慣れておこう」 落ち着いた声で指示を出しながらも、空太は初めて乗る魔女の帚に高揚していた。 これまで体験してきたものとはどれも違う方法での飛行。興奮しないわけがない。 「各魔女はゆっくりでいいからピッチとロールに変化つけてみてくれ。ガンナーはおのおの身体で憶えること」 『ピッチトロールってなんだよ?』 「あー、すまん。前後左右の傾きってことで理解してくれ」 常識だと思っていた言葉が通じない。そんなにマニアックな言葉でもないんだがなぁと首をひねる。 「とにかく揺さぶってみてどのくらいなら大丈夫か確認頼む」 『了解』 「ふーん、アンタ妙なことに詳しいのね」 「詳しいっていうか、うわっ」 二人を乗せた帚が突然大きく右に傾いたかと思うとそのまま反転。視界が逆さまになる。 「で、どう? 身体で憶えた?」 背面飛行のままで葉月。三角帽子が落ちないことはいまさら追求する気にもならない。 「なんならこのままループしてもいいけど?」 『は、葉月ちゃーん』 心配して他の魔女から通信が入る。 「空中戦やろうっていうんだからこれぐらいは慣れてもらわなきゃ」 『で、でも……』 「いや、いい。意外と落ちたりしないもんなんだな」 帚の柄を太ももで必死に挟み込み、葉月の腰にまわした腕には力が入っているものの、空太は平然と答えた。不思議な力が作用しているのか、落下する気配はない。 「……お尻を帚から外したら落ちるわよ」 くるりと反転。元に戻して葉月がこぼす。思ったほど空太が動揺しなかったのが気に入らないようだ。 「もう少し手荒くしてもいいから色々やってみてくれ」 「……そう」 「くっ」 次の瞬間、他の魔女達の帚を置いてきぼりにして急加速。 ジクザク飛行に急激なターン。急上昇(クライム)からストールターンで倒立姿勢に入り、一気に急降下(ダイブ)。 他の魔女すら震え上がるようなアクロバット飛行が繰り広げられる。 「うわぁ、あの女絶対サドだな」 「……ちなみに私達にあれをやれと言われても無理ですから」 「いや、絶対に言わないから」 「こっちはこちでやってきましょ」 「そうね」 「でも大丈夫なの?」 「大丈夫だろ、たぶん。久世はきっとマゾだから」 『誰がマゾだ誰が』 通信機から聞こえる空太の声は落ち着いていた。いやむしろどこか楽しそうですらある。 『……プガチョフ・コブラを体験できるとは思わなかったな。そうか翼断面とか関係ないから揚力が……』 「おーい、久世くーん?」 空太が飛行機好きとというのは大地しか知らない。よって今の空太の様子はただ気味が悪くうつるだけだった。 『いつまでも遊んでいるんじゃあない』 唐突にキリエから通信が入る。 『早く次のステップへ移れ。偵察班がコルウスどもを見つける前に終わらせろ』 「了解」 流石にはしゃぎ過ぎたかと反省する。まだここは地上から見える距離だ。 「じゃあ皆のところへ戻ってくれ」 「……分かったわよ」 震えて泣き言を言うかと思っていたが、悲鳴どころか嬉しそうな声まで出されてしまうとは完全に予想外だった。なんなのこいつ? と疑問を深めながらも、見事なインメルマンターンを見せて他の魔女達と帚を並べる。 「楽しそうだったなおい」 「いや、そうか? でも魔女って凄いんだな」 大地のからかいにも気付かずに素直に答える。キリエの静止がなければずっと続けていそうであった。 「おかげで色々分かった。問題点もある」 「問題点?」 ああ、とうなずいて、空太はこれは結構厄介だぞと言った。 「まずガンナーの異能について説明した方がいいな」 縦列飛行の先頭で空太が解説を始める。 「俺達の異能は大雑把に言うと光線を撃つってやつだ」 「うわ。ぶっちゃけ過ぎだよそれ」 ガンナー達の抗議の声は無視する。 「それぞれ射程や威力、連射力なんかは色々だけど、弾丸を必要としないという点で基本は同じだ」 ひとくちに射撃系異能といっても様々だ。実際に弓矢や銃を使用する者もいれば空太達のように何も持たずに発現させる者もいる。今回のメンバーは全員荷物となる銃弾を必要としない者ばかりが選出されていた。当然帚に乗る為である。 「実際に見てもらう方が早いな」 そう言って空太は右手を横に伸ばす。人差し指と中指を揃えて伸ばし、親指を立てる変則的な指鉄砲。 精神のセーフティを外して魂源力を励起する。この感覚を言葉にして説明するのは難しい。散々訓練をしてきて身体に染み込んだ行為だ。もう無意識で一連の動作ができる。そして精神のトリガーをひく。 シャっと空気を灼いて青白い光が解き放たれる。一瞬空中に青いラインが描かれた。 銃火器のような銃声もなければ反動もない。そして威力や射程はそれに匹敵する。味方とすれば便利このうえのない異能であり、同時に敵に使用されたり悪用されるとなると非常にやっかいな能力であった。 「ま、こんな感じで。漫画と違ってビシューンとか派手な音はしないけどな」 感嘆の声をあげる魔女達に苦笑が浮かぶ。凄いのはお互い様だろう。 「じゃあ次に三島……ガンナーブルー、小さい奴頼む」 「おっしゃ」 大地も空太のように腕を伸ばす。広げた手のひらを上に向けて魂源力を励起。するとジジジと空気を灼いて野球のボールほどの球が発生する。青白く輝く球体の表面からはときおり小さな放電が枝を伸ばす。雷球だ。 ひょいとそれを放り上げると、雷球は宙に浮かびあがり大地らを乗せた帚の周囲をくるくると回り始めた。 「わあ」 「シューティングゲームのオプションみたいだろ?」 と自慢げな大地。もっと力を込めれば大きく出来るし、数も増やせると語る。 「ガンナーブルーの異能は自在に操れることが特徴だな。射程は短いが攻撃にも防御にも使える」 空太に促されて雷球がまっすぐ飛んでいく。続いての指示で他三名のガンナーの手から放たれた矢や弾がそれを撃ち抜いた。この辺は慣れたもので見事に統制がとれている。 ポンと弾けた雷球はまるで花火のよう。魔女達から溜め息がもれる。 「それじゃあ順番に三発ずつ発射。おおよそでいいから射程と連射間隔を憶えてくれ」 空太からそれぞれ三連射。わずかな時間だが、魔女とは違った輝きが空を飾った。 「今ので分かったと思うけど、俺達のは基本的に撃ちっぱなしだ」 なにかしらの物体に当たるか、射程距離まで飛ぶと拡散する。異能者によっては撃ちだした光線を曲げてみせたり、ミサイルのように自動追尾させられる者もいると説明する。 「つまり目標に向かってまっすぐ発射しなければいけないんだが、ここで問題がある。──魔女が飛ぶ時の障壁だ」 いったん言葉を切って全員の顔を見回す。 「魔女は力場を形成して浮いているだろ? スピードをあげればそれだけ前面に力場が収束されて障壁となって風の抵抗から自身を守るようになっている。ウインドシールドってやつだな。飛ぶだけならいいが、これはガンナーの攻撃と干渉する」 先ほどのアクロバット飛行での体感だ。ゆっくりと浮かんでいるだけならば気付かなかったであろう。詳しい理屈までは分からないが、空太は感覚でそれを理解していた。 「スピードをあげれば当然そうなるわ。まさかわざとゆっくり飛べ、なんて言うんじゃないでしょうね?」 「場合によっては、な」 剣呑な葉月の声にもひるむ事無く、身振り手振りをまじえて説明を始める。 「目標に対してまっすぐ飛んではダメだ。常に斜めか平行に位置をとるようにしてくれ。もちろん都合良くいかないだろうから、その時は無理しないこと。互いの位置と射角を把握して、ひとつの目標にこだわらずに自分の受け持つ範囲に集中してくれ」 葉月を除く四人の魔女で編隊を組ませ、それぞれをフォローし合える陣形をその場で作り上げて行く。位置を確かめては変更し、射撃方向と範囲を設定し、いくつかのパターンに応じた回避方法すら練り上げる。 今回はコルウスという集団が相手である。何よりもパニックに陥らないようにすることを心掛け、いざという時は大地の雷球で盾を作り、攻撃よりも守りを優先することにする。即席ではあったが堅実なフォーメーションが組み上がる。空太にはそういった才能があった。 「で? わたしはどうするの?」 菱形編隊で飛ぶ魔女達の周辺を飛び続けて仮想敵役をこなした葉月が痺れを切らして尋ねた。 「先行偵察に囮に味方のフォロー。まあ臨機応変にバックアップだな」 「バックアップ!? わたしが!? 冗談でしょ!」 その言葉に憤慨する葉月。空太を振り落としかねない勢いだ。 「他と比べてスペックが桁違いなんだ。強い奴が全体を守る。これがセオリーだ。ガンナーだって地上では強いけど、空じゃ魔女と協力しなきゃまともに戦えないんだぜ?」 「別にコルウスぐらいわたしだけでも倒せるわよ」 「だろうな」 そう肯定して次の言葉を封じる。 「でも柊さんも言ってたろ? 今回の任務はそれぞれに経験を積ませる為だって。いつまで経っても瀬野だけが飛び抜けていたんじゃチームとして問題があるだろ」 何故そんな簡単なことも分からないのだろう、と空太もいい加減に疲れて来た。 自分が初めて自覚して戦場に立った時などは逆に緊張で何もできなかったくらいだ。功を焦ってみたところで軍隊のように評価を得られるわけでもないのに。 「チームをないがしろにする奴は真っ先に死ぬぞ」 空太が様々な感情を押し殺して言う。異能はどうしても特殊なスキル故に他者との連携がうまくいかないケースが多い。また周囲との関係を構築することがうまく出来ない異能者も珍しくはない。 だが現実は非情で無慈悲だ。個人の感情だけでどうにかなるものではない。空太は戦場でそれを学んだ。 まがりなりにも生き延びてチームリーダーを任されるようになったのは、指導者と仲間達のおかげだと理解している。彼らから受けた恩を次へと繋いで行く。それは義務だと思っている。 「一匹狼がかっこいいなんて嘘っぱちだ。狼は群れで生きる獣だ。一匹狼なんて群れから脱落したってだけだぞ」 しかし葉月は頑なだった。 「群れて飛ぶのは狩られる側よ。群れなんていらない。私は一人で飛ぶわ」 何がそこまで言わせるのか。空太は途方に暮れた。 『──こちらキリエ。聞こえるか?』 その時、通信機からキリエの声が届いた。 『偵察班から入電。コルウスどもを見付けたぞ。準備は出来ているな?』 「こちらレッド。データ受信を確認。いけます」 タイミング良く気まずい空気を断ち切られて安堵しつつ、端末に送られた情報を確認する。 『さて、諸君。キミらはまだチームとも呼べない烏合の衆だ。だが私は最適の人選をしたと自負している』 キリエは一度言葉を切る。 『最高、などとは言わない。しかし最適の結果を生み出せると期待している。その為の教育と努力を強いて来た。私はキミ達を信じる。魔女とその仲間達を信じる。出撃しろ、最適の結果を要求する』 「了解。出撃します」 キリエの命令を受け空太が指示を出す。さすが魔女。人を乗せるのが上手いなと思う。最高よりも最適を求める上司。悪くはない。 「レッドが先行する。各自編隊を崩さず追随。焦らなくていい、互いがフォローしろ。それがチームだ」 『了解』 おのおのから返事がくる。緊張や不安が入り交じっていたが空太はそれ以上何も言わなかった。 「……いくわよ」 葉月の帚が加速、上昇する。他の帚もそれを追う。 空に五色のラインが描かれた。 「信じる、か。いい言葉ですね」 光の尾を引いてあっという間に視界から消えた魔女達。 彼女達が消えた方角を見上げて彼方が呟いた。日が暮れる前に帰ってこれればいいけれどと、続けてぽつりとこぼす。 「詭弁だな。ただそうあって欲しいと思い込むための逃げの言葉だ」 痛みだした傷に眉を顰めてキリエ。 先日のラルヴァとの戦いで受けた傷は深く、帚の修復はままならず、使い魔も療養中。何かあったとしても駆けつけることは出来ない。ふがいなさに腹が立つ。 「またそんなことを言う。でも魔女が言う『信じる』ですからね。その言葉には『力』があると思いますよ」 「ふん」 不安になっているのを察して励ましているつもりだろうか? なんとなく面白くない。可愛い弟子達が接敵するまではまだ暫くかかるだろう。それまでこいつを虐めて待つのも悪くはないか。 キリエは不敵に笑った。 続く 中編へ トップに戻る 作品投稿場所に戻る